『童話作家』は、あなたにさよならを言われた日

 「グレープ」というデュオユニット、憶えているだろうか。

  50代半ば以上の年齢層であれば、『精霊流し』『無縁坂』という代表的な楽曲がすらすらと脳内を奏でてくれる人の多いだろう。しかし、1976年の解散間近に発表した『童話作家』のメロディが、それらの次に流れ出てこれる人は、よほどのファンという括りで表されるものである。

  来年、デビュー50周年を迎えるさだまさしさん。今やNHKへの出演がよく似合う、国民的人気を誇るシンガーソングライターだ。  もちろん私の耳にも、10代の頃からその作品が放つ繊細で独特なメロディは届いてくれていた。私は、山口百恵さんのフリーク。その縁から、「秋桜」については、常に敬意と絶賛を表していた。

  西条八十賞を受賞した「秋桜」の作詞。25歳当時の男性が、あのような母と嫁入り間近の娘との間の世界観を創り上げられることに、未だ驚愕の境地に達したままでいる。しかし、それ以外のさだ作品については、これまで心惹かれる出会いに恵まれることはなかった。13歳でビートルズのレコードに触れてしまう衝撃に被爆してしまった私は、それ以降、洋楽探求への趣向を邁進し、「音楽は海の向こうから聴こえてくるもの」という概念がすっかり根付いてしまうようになってしまっていた。 

 そのような頑なな脳内ではありながら、齢を重ねていく自然の法則の力に例外なく促されては、少しずつ趣向にも緩和の波が押し寄せてくれるようになっていった。「苦手」という枠に入れたまま放置していたものでも、その中に光るものを発見できるようになれれば、受け入れ体制に躊躇の壁はいつの間にか低くなってくるようになっていった。そして、ようやく昨今、50代の齢にして、さだまさしさんの偉大な楽曲が放つ歓びの世界に到達できるようになれたのだ。その大きなきっかけとなってくれた出会いの作品が、『童話作家』である。

  私が下手な詩や童話を手がけ、発表の場を与えて頂けるるようになったのは、6年前からのこと。今年も4月に仙台で詩とハーブのコラボレーション展を開催する機会を頂いた。

  才能に恵まれることのない私が、なぜこのような活動を継続してこられたのか。その中心にある想いは、グレープの『童話作家』に描かれている心情とそのままリンクできてしまう。その気づきの到来があった時、私は大きな生きる歓びの実感を得ることができた。

  さだまさしさん。

  私は、あなたの優しさのあり方が好きだ。あなたは、やはり九州の男。数々の楽曲を聴きながら、心に深く根付く男としての魂を感じ入ることができる。

  自分の町でコンサートの便りをキャッチできたなら、次回は見逃さすに絶対駆けつけよう。

  この困難の闇に行き手を阻まれてしまっている今、目の前にいるあなたの強固な優しさに、とても会いたい。 


 ================================================================ 

 『童話作家』 

 作詞:作曲 さだまさし 


私が童話作家になろうと思ったのは

あなたにさよならを 言われた日

もとより あなたの他には生き甲斐などないし

さりとてこの世をみつめる 勇気もなかったし

今迄二人が過ごしたあらすじを 想い出という消しゴムで消して

夢でもたべながら ひっそり暮らしてみよう

あなたの横顔を 思い出さずに済む様に

私が童話作家になって思うのは

本当を書くことの難しさ

だって 私自身がとても嘘つきで

涙をかくしては 笑って過ごしてる

原稿用紙に色鉛筆で 幸せの似顔 描いてはみるけど

悲しいくらいに 駄目な私の指先は

気がつけばいつでも あなたの笑顔を描いてる

私が童話作家になろうと思ったのは

あなたにさよならを 言われた日


0コメント

  • 1000 / 1000