リメンバー「クロムウェル」


 20代前半、オートバイ「ヤマハSR400」を愛車とし、ヘルメットは憧れの英国老舗メーカー「クロムウェル」のハーフムーンタイプ(日本では「お椀型ヘルメット」と呼ばれている)にすると絶対的に決めていた。 

 当時の仙台には、クロムウェルを常時品揃えしている専門店は無く、取り寄せてもらえる店舗を探して、待ちに待って入手した記憶がある。

 懐かしい、昭和の思い出だ。 

 当時の自分にとって、オートバイは自由の象徴だった。クロムウェルを被ってゴーグルを装着するだけで、日常の時間の流れを遮断してくれる力があると只管に思い込んでいた。 

 そんな愛しきクロムウェルも、オートバイも、平成の時代となり、サラリーマン生活をスタートした生活の変化とともに、時の流れの彼方に忘れ去られて行くようになった。今は、もう姿形もない思い出であると認識していたのだが、ある日、工具入れの中からクロムウェルのヘルメット内側に縫製されていた布製の「タグ」があるのを見つけることができた。

 きっと本体から剥がれてしまって、捨てることができずにそのまま工具入れの中に押し込んでいたのだろう。6×5センチ四方の、ボロボロで汚れも酷いものであったのだが、これを小さなフォトフレームの中に入れて、部屋に飾ることにした。

 欲しくて欲しくて、でもきっと当時の自分のサラリーにしては高価な品物であったのかも知れない。そうやって入手した品物は、やはり忘れることができない。今、あのクロムウェルのヘルメットのように、どうしてもこれだ!とストレートに感じ入り、入手することに大きなエネルギーを傾けることができる対象は、何かあるだろうか。

 そのような記憶をインプットしておくためにも、この額装されたタグを視界に及ぶ場所に置いておくことにした。

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