小坂明子「あなた」に想うこと


 これまでこの世には、星の数ほどの作品が生み出され、そしてこれからも枯れることなく生まれ続けてゆくだろう、Love song。 

 Love songの中で、私の視界に別格の光を放ち続けてくれている作品がある。 

 それは、小坂明子「あなた」。 

 16才の音大付属高生が、退屈な倫理社会の授業中に、当時のボーイフレンドとの別れの予感に揺れ動く心中と向き合いながらノートに書き綴った歌詞。その時間、ほんの20分ほどのものであったという。 

 この作品が、16才の少女が創ったものであるという事実に、私はさほど重要性を感じることはない。それよりも、歌詞の中に潜まれている言霊、綴られた言葉同士が織りなす抑揚。これらの表現体に、何の無理なく達することができた作者の心の有り様と、一切の煩悩を突き抜ける自我の強さに、強い感銘を受け続けてしまう。この作品に描かれた心象風景、込められたナチュラルでストレートな恋愛観の美しさは、これからも時代を超越して、輝きを放ち続けてくれるだろう。 

 さて、ひとつ重要な問題点がある。それは、女性である小坂明子さんに対しての男性側からの観点で、女性が創るLove songに100%の共感を持つことは困難であるということだ。しかし、それであっても重要なことは、共感よりも作品から受ける女性性に対する「羨望」であると、私はそんな自論を持っている。 

 ♪ そしてわたしは レースを編むのよ ♪ 

 レースを「編みます」ではなく、「編むのよ」とした歌詞に込められた意思。この部分がとても好きだ。そして、最も重要な箇所であると受け取っている。 

 「あなた」には、決して色褪せることなく、自分には絶対に到達することができない羨望の強さがある。

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